「東京の街路樹(その2)」(大部分の画像は、クリックすると大きくなります。)

サザンカ(sasanqua camellia/Camellia sasanqua)

文京区春日一丁目(春日通り、中央大学工学部付近)にて。  ツバキ科ツバキ属の常緑小高木。サザンカは常緑樹で、 花の少ない初冬に赤や白のきれいな花を数多く付け、花期もながいことが好まれ最近植樹本数が急増しているようである。なお、 サザンカ(山茶花)は、江戸前期に出版されたいけばなや園芸の本に記録されているが、観賞用として庭園に植えられるようになったのは、 室町時代頃と推定されているようである。

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サルスベリ (crape myrtle/Lagerstroemia indica)

板橋区高島平四丁目付近にて。 ミソハギ科サルスベリ属の落葉小高木。原産地は、中国南部。 サルスベリは、キョウチクトウ(夾竹桃)とともに夏を代表する花である。 樹皮がはがれた後の幹がツルツルで文字通り猿も滑りそうというところから、和名が付けられている。 7〜9月に花が次々に咲くので「百日紅(ヒャクジツコウ)」とも呼ばれる。材質が硬いため、線路の枕木などに利用される。 高島平の並木は1km 以上にわたり、しかも紅白の花が入り交って植えられておりなかなか見事である。1992年から順位を2つ上げ17位になった。

(サルスベリ)


九州や南西諸島に自生し、樹高も一回り大きく、葉先の尖った落葉高木のシマサルスベリ(crape myrtle/Lagerstroemia subcostata)は、 小石川植物園の奥にも本数は少ないが、かなりの大木の並木がある。昨年、 北区田端3丁目と4丁目間の通り (田端銀座前交差点から八幡神社あたりまで)では街路樹として用いられているとの話を聞き、8月上旬に出かけてみたところ写真のように見事な花を見ることができた。

(シマサルスベリ)

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シナノキ(Japanese linden/Tilia japonica)
 

中央区銀座7丁目(並木通り)にて。 ほぼ日本全土に分布するシナノキ科シナノキ属の落葉高木で、 5月から6月にかけて芳香を放つ多数の淡黄緑色の 小花が葉の腋から垂れ下がる。花は良質の蜜を出すので、養蜂の蜜源植物としても利用される。また、 シナノキの樹皮の繊維は、 日本では昔から布(科布)や縄(科縄)として利用されてきた。信濃国は、 古書には科野国とかかれており、長野県には今も更科(晒科)、仁科(煮科)等樹皮の調整に関連する 地名が残っている。シナノキは長野市の「市の木」に指定されており、街路樹にも広く採用されている。 池袋駅近くの明治通りには、欧米で広く植樹されている近縁種の フユボダイジュ(別名:コバノボダイジュ) (Littleleaf linden/Tilia cordata)の街路樹(写真右)がある。なお釈迦様に関係のある「真の菩提樹」は、クワ科のインドボダイジュ(Ficus religiosaで、 葉先が極端に細長くなっているのが特徴である。

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シラカシ(oak/Quercus myrsinaefolia)

港区新橋六丁目(日本赤十字本社付近)にて。   ブナ科コナラ属の常緑高木。福島県以南の本州、四国、九州に広く分布している。関東では、カシといえば普通 シラカシを指す程である。 江戸時代から「屋敷林(生垣)」として用いられてきた。ゴルフ場などにも多数植えられている。葉の色が明るく、樹形も良いので、 クスノキ同様常緑の街路樹としても好まれている。シラカシの名の由来は、葉の裏側がウラジロガシのように白いためではなく、 材がアカガシに比べ赤くない事によると言われている。

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シンジュ(tree of heavean/Ailanthus altissima)

渋谷区代々木公園付近 (井の頭通り)。ニガキ科の落葉高木であるが、奇数羽状の複葉の形がウルシ(ウルシ科ウルシ属)に似ているため、 ニワウルシとも呼ばれる。シンジュ(神樹)という和名は、 英語の普通名(”天国の木”)に由来するものと思われる。 成長が早く、紅葉も美しいが、街路樹として用いられているのは珍しい。

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スダジイ(Castanopsis sieboldii

武蔵野市関前一丁目、東京都水道局境浄水場裏の井の頭通りにて。 ブナ科シイ属の常緑広葉樹。比較的温暖な関東以南の西日本を分布域とする。 属名のCastanopsisはクリに似て異なるの意。種小名のsieboldiiは、日本の動植物を研究したドイツ人シーボルトの名に由来。英名はない。 スダジイの幹は、まっすぐなものが少ないことや花期には木全体が黄色く見える程たくさんつける花が独特の強い(どちらかといえば 不快な)匂を持つことなどから、街路樹として用いられることは少ない。 なお、スダジイのドングリはタンニンの量が少ないため渋味がなく、そのまま食用になる。


ソヨゴ(Soyogo/Ilex pedunculosa

千代田区三番町(内堀通りにて) モチノキ科モチノキ属の常緑小高木。青い葉を燃やすと、葉がふくれてはじけることからフクラシバとも呼ばれる。葉のふちは全縁で大きく波打つのが特徴。 雌雄異株で、メスの木にはモチノキ科のほかの植物のようにおおくはないが、赤い実がまばらにつく。 H20年に始まった街路樹倍増計画(100万本目標)に沿って急速に植樹数が増えた中木の一つである。


タイサンボク(southern magnolia又はlarge flowered magnolia/Magnolia grandiflora)

JR目黒駅付近

光沢のある革質の大きな(20〜30cm)葉を持つモクレン科モクレン属の常緑高木 である。また、タイサンボクは、 6月頃直径25cm前後の大輪白色の花を付ける。泰山木等の漢字が当てられる。

(平凡社「日本の野生植物」より)

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タブノキ:Japanese Machilus(Machilus thunbergii)

北区十条台1丁目北養護学校前にて。 クスノキ科、タブノキ属の常緑高木。タブノキは、 海外ではアボカドと同じクスノキ科、ワニナシ属 (Persea)に分類されている場合が多い。イヌクスとも称される。 神社や公園で大木になっているタブノキを見かけることが多い。我家の入っているマンションの玄関横にも一本植わっている。春先、大きな混芽(花芽と葉芽を含んだ芽) が力強く開く様子が特徴的である。 「北特別支援学校前」付近(バス停:北養護学校前)から滝野川4丁目交差点に至る大木の街路樹は大変見事である。


ツバキ(common camellia/Camellia japonica)

伊豆大島(波浮港付近)、              港区海岸一丁目(竹芝桟橋付近)

 ツバキ科ツバキ属の常緑高木。ツバキといえばまず伊豆大島が思い浮かぶ。現実に、大島の波浮港付近の道路 には集中して植えられている。また、大島には樹齢200〜400年の大木がアーチを形成している「椿トンネル」などもある。 区部でも世田谷や杉並等に散在して植えられており、植樹総数ではむしろ区部のほうが多いようであり、都内の植樹順位も 現在19位となっている。なお、大島には数百種のツバキを集めた広大な「大島公園」があり、一見の価値はある。

ヤブツバキ

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アメリカデイコ(cockspur coral tree/Erythrina crista-galli)

港区赤坂一丁目(アメリカ大使館付近にて)アメリカデイコは、カイコウズ(海紅豆)とも呼ばれる。南アメリカ原産のまめ科の落葉樹で、 6月下旬から夏にかけて多数の濃紅色の大型の蝶形花が枝先に順次咲くおもしろい樹である。都内の街路樹としての植樹数は、 きわめて少ないが、アルゼンチンでは国木、パラグァイでは国花、また鹿児島では県木として親しまれている。 新橋駅前 (機関車広場側)の歩道脇にも30年ほど前に植えられたかなりの大木が一本あり、毎年見事な花をつけていたが、1990年代の 隣接ビル建替え工事の際に伐られてしまったのはまことに残念である。 なお、沖縄本島に多く見られる(豆科の高木である) デイコ(デイゴ)は、春先、葉が出る前に花が咲く別種(coral tree/Erythrina variogata var. orientalis)である。 デイコ(デイゴ)は、漢字の梯沽(梯梧)によると言われている。

(週刊朝日百科「世界の植物」49より)

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トウカエデ(trident maple/Acer buergerianum)

新宿区市谷外堀通り(市谷駅−四谷駅間)にて。 カエデ科カエデ属の落葉高木。トウカエデ(唐楓)の名が示すように、中国東南部原産に木であり、日本には18世紀はじめに入って来た らしい。カエデも種類の多い樹木であるが、街路樹としては トウカエデが 圧倒的に多い。植樹数も都内では、第5位となっている。樹勢が盛んな点が買われたものと思われるが、幹は汚く、 都内では余りきれいに紅葉しないので、個人的には好きになれない。

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トキワマンサク(Chinese fringe flower/Loropetalum chinense

千代田区丸の内1丁目、パレスホテル前(内堀通り)にて。マンサク科,トキワマンサク属の常緑小高木である トキワマンサクの花の色は、基本種はごく薄い黄色であるが、街路樹としては、紅色の変種であるベニバナトキワマンサク (中国原産で葉も赤みを帯びる)がよく栽培されている。東京都では、東京大気汚染公害裁判の「和解条項」に関連した街路樹倍増計画(10年間で48万本→100万本)がH20年度から実施に移 され、高木間への中木植栽等が始められた。このベニバナトキワマンサクもその一環として植栽されたものである。なお、東京都では、 同時に「マイ・ツリー −わたしの木−」を企画し募金 行っている。

トキワマンサクより一般的である花弁の縮れた黄花をもつマンサク科、マンサク属のマンサク(Japanese witchhazel/Hamamelis japonica)が、春日町交差点から水道橋にかけて文京区の 白山通りに植えられていることに最近気付いた。(写真右)

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トチノキ(horse chestnut/Aeaculus turbinata

千代田区霞ヶ関(桜田通り)にて。  トチノキ科トチノキ属の落葉高木。仏名のマロニエとしても良く知られている。掌状の複葉を持つ。 花は大型で美しく、白色でやや紅色を帯び、蜜を多く分泌するので花時には蜜蜂が群集することがある。花は見 事であるが、 夏季の旱魃やウドンコ病等によって葉枯れし、落葉しやすいのが欠点である。果実は、食用になる。この桜田通りの並木は、木も大きく都内一の景観であろう。 なお、トチノキは、栃木の県木になっている。

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トネリコ(Japanese又はChinese ash/Fraxinus japonica又はchinesis)

(「原色野外植物検索大図鑑」より)

葛飾区白鳥二丁目付近(水戸街道)トネリコは、元来東北、北陸地方の山間の湿地に自生するモクセイ科 トネリコ属の落葉高木であり、枝にろう質を分泌するカイガラ虫がよくつき、これを戸の溝に塗ると滑りが良くなることから 「戸塗り木」と言い、これががなまってトネリコになったと言われている。 最近は見かけなくなったようだが、かってはタモノキ(田面の木)とも呼ばれ、田の畦に稲架木(はさぎ) として広く植えられ、水郷風景のシンボルとなっていた。材が硬く弾力に富んでいるため野球のバットなど に広く使用されるアオダモと同属である。 都の「街路樹マップ」によると、下町の主要道路の街路樹としてかなりの本数のトネリコが植えられている。 2000年9月に水戸街道(国道6号)の京成「お花茶屋駅」付近から中川に向う約1.5kmに亘って植えられ ているはずのトネリコ街路樹の写真を撮るため出向いたところ、大半が枯死したためか撤去されており、 わずか数十本が残っているだけであった。これらも、葉の大半が虫食い状態となっているものが多く、驚かされた。

一方、シマトネリコ(Griffith's ash/Fraxinus griffithii )は、別名がタイワンシオジと呼ばれているように、 元来沖縄等の暖地に生える常緑〜半常緑(羽状複葉)の樹木であるが、寒さや病虫害にも比較的強い。都内では 見かけることが少ないが、高知市内等では街路樹としてかなり多く用いられているようだ。また、観葉植物としても人気がある。


千代田区 神田駿河台1丁目、明治大学前にて。

(シマトネリコ)

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ナツツバキ(Japanese stewartia/Stewartia pseudo-camellia
    

千代田区四番町、市ヶ谷駅付近(日本テレビ通り)。  ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。地方によっては、「サルスベリ」 とも呼ばれているようである。また、「シャラノキ」という別名をもっているが、これは「ハクウンボク」同様インドの聖木 「沙羅双樹(熱帯雨林に分布するフタバガキ科の樹木)」に見立てて寺院などに植えられているためだと思われる。ナツツバキは、 日本原産の樹木で、福島、新潟県以南の本州、四国、九州、対馬の温帯山地に分布する。6,7月に新しい枝の葉腋に白椿のような 5弁の大きな花を付ける。花のあとには写真(中)のように比較的大きな実がつく。また、成長とともに写真(右)のように樹皮が 斑点状に剥げ落ち、つるつるになる。この赤茶色の幹は、茶室の床柱などに用いられる。


「東京の街路樹(その3:ナツミカン〜ワシントンヤシ)」