最近文京区で災害時に液体ミルクを確保できるようにすることが話題になっているが、国際的な観点からみて日本の対応は
液体ミルクの扱いが正しく認識されていない。母乳は子どもに必要な栄養素だけでなく免疫に対しても母乳で育てられることが一番大切であること。
適切な(例えば国際的な母乳育児の専門資格を持つ専門家など)支援があれば、母乳が出ないとか出にくいと思っている母親も、ほとんどの場合、
わが子に必要な母乳を分泌できるようになる。母乳はどんどん赤ちゃんが吸うことで産生すること。WHOが定めている母乳代用品のマーケティング
に関する国際規準に日本も賛成しているが、文京区が進めようとしている対応はこの「国際規準」からずれており、母乳を与えている母親にも液体
ミルクを配布することが盛り込まれていることで母乳分泌の低下を招き、よってミルクの量が増えていくことを危惧している。
<この問題に長く関わってきた出席者からの報告>
※ WHOの「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」によれば、政府*は「責任をもって、確実に、乳幼児栄養法について、客観的で一貫した情報を提供し、 家族ならびに乳幼児の栄養という分野にかかわる人々はそれを活用できるようにすべきである」こと、乳児栄養の情報提供にあたっては、 「母乳育児の利点と優位性」「混合栄養を始めることの、母乳育児へのマイナスの影響」などの明確な情報などと共に、「母乳代用品が必要ない場合、 または誤った使用による健康被害についての情報」を含め、「母乳代用品の使用を理想化しかねない写真、絵、文章を使うべきではない」と書かれている。 (第4条 情報と教育)*「政府」とは、英語でgovernments(行政)であり、地方自治体も含まれる。)
小さじ1杯(5CC)の母乳には、菌を殺す細胞が300万含まれているので、感染症が蔓延しやすい災害時には特に母乳育児を継続することが大切になってくる。
母乳には、母子をリラックスさせる作用もある。
発災時は、国際的な基準でトレーニングされたスタッフによって乳児栄養のアセスメントを行い、平時に母乳だった場合は母乳とミルクがどれくらいの割合だった
かにかかわらず、平時と同じように母乳が継続できる支援を行い、ミルクの赤ちゃんには、発災直後、清潔な軟水や水道水、容器や手指を消毒する熱源がない期間
だけ液体ミルクを必要な分量きちんと配布する。
粉ミルクが作れる環境になったら粉ミルクに切り替えることが大切である。
あわせて、母乳をあげていなかったお母さんに母乳分泌できるように支援することも
必要である(リラクテーションと言い、中断していた場合でも再開することが可能である)
母乳を飲んでいない赤ちゃんは最も脆弱なので、特別に医療との連携を厚くする必要がある。オーストラリアなどでは、そのようなサポート体制が構築されている。
災害時の液体ミルクは、発災直後に粉ミルクの調乳ができない期間だけに使うものだということを広く周知するとともに、母乳育児が継続、再開できる支援を行う
体制も急いで構築して、災害弱者の赤ちゃんを守れるようにする必要がある。
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