第8回《お結びネット》:交流会

1. 日時:2010年2月9日(火)、18:30〜20:30
2.会場:アカデミー茗台(旧茗台プラザ)7階 ボランテイアルーム
3.参加者:約25名
4.内容:「基本構想・都市マスタープランについて」他

@ 開会挨拶                      司会者、社史(とし)を育む会・湯立坂  並木さん
   ここにきて「基本構想」及び「都市マスタープラン」について区役所の方では策定作業にかかっており、一般からも意見を 聴かれる機会が多くなっているが、殆どの人は内容について十分に理解していない、あるいは関心を持たず、わからずにいる。 我々もこれらに積極的にかかわって行くことが必要なので、関係する講師の方々に解説をお願いして勉強したい。

A 都市マスタープラン改定について                都市計画審議会委員・区議  村越まり子さん
「都市マスタープラン」は、正式には「市町村の都市計画に関する基本的な方針」といい、都市計画法 に定められた法定計画である。 現行の「文京区の都市マスタープラン」は、 1996(H8)年に策定したもので、現在下図のようなスケジュールで改訂作業が進められている。


また、都市マスタープランと諸計画との関係は右図の通りである。
  改定の理由としては、まちづくりに関する法令の改正、マンションの高層化、まちを取り巻く環境の大きな変化等がある。新たな試みとしての地域別の ワーク・ショップ等を経た「文京区都市マスタープラン(中間のまとめ)(案)」が2月8日の文京区都市計画審議会委員会に提出され審議された。
   土地利用に関しては、絶対高さ制限の導入、景観形成の方針では景観行政団体への移行、魅力を生かすまちづくり方針などが新たに盛り込まれた。 なお、22年度中の改定終了後も、5年毎に区民参加で見直すことになっている。なお今回の「都市マス」の問題点は、
・ 甘い自己評価のため、現行マスタープランの検証が不十分であること。
・ 「区民参画」による5年後の検証が、「パブリック・コメントを求めることがある」などとしているが、形式的なものになる恐れがあること (国立市の例のようなしっかりした地域別協議会が必要)。
・ 絶対高さ制限を導入するという方針が、改定案に盛り込まれるが、既存の建物を守る方向に見えるとともに、大規模敷地を持つ大学等の建て替えは特別扱い になるおそれがあること。
・ 20年後に予測される人口減少時代のまち作りの視点がないこと。
・ 低層住宅を守るための方策がないことなどである。
 (配布資料<都市マスタープラン改定について>参照)

《補足説明》                    文京区都市マスタープラン改訂検討協議会 公募委員 鹿野正樹さん
・ 前回の都市マスの評価は、区の内部で実施したため、基本的には問題なしとされているので、今後これを直してゆきたい。
・ 前回の都市マスでは、人口減少を見込みながら、高層ビルをどんどん建てる方向にあった。現実には、人口は若干増えたが、2020年では減少が予測されている。
・ 高さ制限の導入は謳うが、具体的な数字は出さない。「都市マス」は、都市計画の理念を書いておく性格のものなので、残念ではあるがやむをえない。
・ 町内会からの意見の中には、若い人中心の人口増をあまり歓迎しない声もあった。
・ 文京区は、「景観法」による「景観行政団体」になっていないので、「景観条例」を決められないので、まずは同団体の認定獲得を推進する。

《Q&A》
Q:「若い人の流入を余り歓迎しない」という意見は、興味深いが、コミュニティ形成への対策は、改定案には組込まれているのか?
 A:今のところ余りない。(配布資料 「文京区都市マスタープランの改定に向けた区民との意見交換会における意見と対応案について」の“地域の魅力”の項参照)
 Q:3月のパブリック・コメントに書きたいが、文京区の魅力が将来像に結びついてなく、もっぱら高層ビル等の拠点形成に重点があるように読める。
 A:83年に「地域住宅計画」が出来て、93年の「住宅マスタープラン」を経て「都市マスタープラン」作りに向かったが、文京区の魅力を具体的にはなかなか表現できていない。 なお、今回は従来余り取上げられなかった「緑視率」(眼に見える緑の多さ)という概念を取り入れた。
 Q:「景観行政団体」とはどういうものか?
 A:「景観法」の下での指定団体であり、東京都では新宿区がすでに指定されている。文京区も指定を受ける方向性にはあるが、区の担当課では困難視する向きもある。 新宿区の「新宿区景観条例」によると、例えば「イチョウ並木」から見た絵画館の後ろ側には高層ビルは建てられない等の具体的な規制がある。絶対高さの規制もある。
     Q(意見):しかし、東京都の下にある文京区が景観条例を作った場合、都のもの(東京都景観計画)より悪くなる可能性がある。例えば、後楽園周辺は、都では「制限地域」 に指定しているが、シビックセンターに見られるように、文京区はこれに従っていない。
 Q(意見):文化財を圧迫するものは建てないとの東京都の景観条例はあるが、東大の赤門等の「国の文化財」は例外扱いになっており、対象は「都の指定文化財」 のみになっているのは、納得行かない。

B 「基本構想」について             自治制度・行財政システム調査特別委員・区議   田中和子さん
  基本構想説明の前に一言:懸案となっていた教育センター/福祉センター建替え問題が、やっと「市民フォラム」の提案どおりの案(教育センター建設地について当初案の 五中跡地→湯島総合体育館跡地)が示されて3月いっぱいで(案)がとれることとなった。
 「基本構想」は、地方自治法第2条により、行政運営を総合的に行うための指針となるものであり、全自治体で制定が義務付けられている。「基本構想」は自治体の全ての 計画の最上位の計画と位置づけられているため、これと整合性の取れない計画は、認められない。
 しかし、民主党は「地域主権」を標榜しており、 地方分権改革推進委員会の第3次勧告の受け入れも表明している。したがって、新政権下では将来、義務付けではなく、 作りたければどうぞという姿勢になるものと思われる。なお、一般的には、「基本構想」、「基本計画」及び「実施計画」の3本からなるが、文京区の場合は、 「基本構想」の中に基本計画的なものが織り込まれているため、「基本構想」と「実施計画」の2層構造になっている。また、基本構想は、区長選のマニフェストと 基本構想がダブルスタンダードになってはおかしいので区長の主張が強く反映される。このため区長任期(4年)と基本構想のスパン(10年程度)との整合性の問題が生じる。 文京区が策定中の基本構想の区民委員は、公募せず無作為抽出したが、お結びの会でも講演した福嶋 浩彦氏によると「仕分け」のように両者の言い分を聞き、 判断が必要な時は無作為抽出がよいが、議論を必要とするときは公募を行うべきとのこと。また、今回は、策定にコンサルタント(富士通総研)を活用した。「骨子」 が出来た後に分野別にワークショップが開かれ、参加者の意見を入れたものをコンサルタントが現在取りまとめ中である。しかし、区民の最大関心事といえる行財政運営分野 に関してのワークショップは、実施されなかった。今回は、これまでの骨子にその概念が乏しかった、男女共同参画、減災も加えられた。また、議論はあったが横串として 「おせっかい」という言葉が使われている。平成13年策定の現在の基本構想は「自治」や「区民参画」の精神が謳われている。(配布資料:「基本構想と文京区政」参照
      *(H13年制定の現行「基本構想」の第T章)

 <今後の予定>
(1) 基本構想策定協議会:4月中旬〜5月中旬
(2) パブリックコメント:H22年3月1日〜31日(区報特集号;3月1日発行
(3) 区民説明会:3月5日〜11日(区内4箇所)

<配布資料「新たなる基本構想(素案)」>の特長、重点事項
・時代の変革に合わせて、区民、地域活動団体、NPOなどの「新たな公共の担い手」と区の協働を目指している。
・人口推計では、20万人達成をめざす。
・基本構想を貫く理念は、
   (1) みんなが主役のまちをつくる (2)「文の京」自治基本条例 (3)  「文の京」らしさのあふれるまちをつくる

  <分野別の将来像>の特徴や問題点など
(1) 子育て・教育: 多様な子育て支援メニューの整備(民間企業の参入)、地域住民の学校教育への参画促進等
(2) 福祉・健康: 高齢者が自立した暮らしが出来るよう、自助、互助(新概念)、共助、公助を組み合わせる。
(3) 障害者福祉: 障害者の居住空間づくりの推進等。‘サービス仕組みの一元化’の項は削除された。
(4) 生活福祉: 生活困窮者の就労支援をうたっているが、母子家庭でも80%は働いているので、余り意味がない。
  (5) 地域コミュニティ:協働の進めなどルールもないのに「新しい公共の担い手」という言葉が踊っている。
(6) 産業振興: 新たな価値を生み出す企業の支援等
(7) 生涯学習: 所管が、かっての教育委員会から区長部局に変わった。策定中のアカデミー推進計画との整合性をどう図るかが課題。
(8) 文化振興: 伝統工芸・文化の保護・継承のため、それらにかかわる人々の養成・育成を支援する。
(9) 交流:  外国人の参加をワークショップの意見を入れ、参画・貢献とした。
(10) 住環境: 地域主体のまちづくりを進めるという表現は、漠然としている。公共交通機関の整備(具体的には、小石川地区に 「B−ぐる」を走らせる計画か?)。
(11) 災害対策: 防災とともに減災に触れているが、高層ビルの耐震対策には触れられていない。
(12) 区民サービスの向上: 区は、昨年勝手に「指定管理者」の範囲を広げた。  これらに関して、是非区民の意見をあげてほしい。

《Q&A》
Q:見直しはどうなっているか。
A:基本計画は文京区の場合には、3年毎に見直している。自治体によっては、首長が変わった場合に基本構想の見直しも行っている。

C 各地区からの報告その他
 (@) 礫川出張所                             礫川交流館を考える会   片岡 護さん
 礫川出張所は、旧い名前であり、現在は、1階が地域活動センター、2階が交流館になっている。前回(2009年9月16日)の報告から半年たったが、大きな進展はない。 当面は、活動の主眼をセンター建て替えの促進に絞っている。交流館の使勝手、設備等に関して利用者の生の声をアンケート調査等で吸い上げ、行政に直接訴えて行きたいが、 現在交流館使用グループ(30〜40G)の内、14〜15Gしか代表者氏名等の詳細がわかっていない。なお、24ある関連町会、自治会は別途の行動を指向している。

(A) 本郷通りの建物高さ制限について            本郷通りの建物の高さ制限を進める会    松本さん
 題記について文京区都市計画部に出していた要望書に11月に配布資料のように絶対高さ制限は、都市マスタープランの中で考え方を示し、 具体的な手続きとして22年度中に準備に入り、23年度から都市計画決定に向けた作業を進めてゆきたい等の回答があった。また、 「絶対高さ制限を定める高度地区」導入の検討過程は配布ブロック図のとおりとのこと。

(B) 湯立坂脇マンション・銅御殿問題                               大谷光陽子さん
 マスタープラン上の中低層地域に高層マンションが建てようとする問題であるが、工事はどんどん進んでいる。 業者は、休日にも工事をしようとしている。現在くい打ち工事が終了しているが、その振動で隣接する銅御殿に影響が出てきたため、因果関係の調査を行い、 学者・文化人等からなる「銅御殿を守る会」からは、ひび割れは工事によるものと断定した文書を区長等に出している。 このほか、影響が軽微だとして許可した文化庁に対して、文化審議会での審議を要望して活動をおこなっている。

   (C) 関口の目白坂計画                 関口2・3丁目地域の環境を守る会    野口さん
 昨年9月に消防車のアクセス道路が、S字登りカーブで幅員が2.7mしかないこと及び地震時の対策不備であるとの2点をあげて、東京都開発審査会に異議申し立てしたが、 却下された。口頭審査はあったが、最終的には認められたが、「原告適格」が主題となり、前述の2点については殆ど議論されずに終わってしまった。また、告知もなく、 昨年8月に建築許可が下りていたことが判明し、憤りを感じている。なお、現在工事はとまっており、緑は回復しつつある。

  (D) 春日・後楽園駅前地区再開発                    文京区の環境を守る会    藤原さん
 昨年6月の都市計画決定後、会としては殆ど動いていないが、かわりに「景観と住環境を考える全国ネットワーク」で他地区のメンバーと活動の計画をしている。 また、先々月「首都圏ネット」を立ち上げ、東京及び近郊の人達といろいろ考えている。その一つとして「東京の危機的文化財ツアー(大型バスを仕立て、マスメディアも招き、 湯立坂、浅草、赤門、後楽園等を回る)」を計画している。また、会としてではなく個人として情報公開請求(例えば、都市計画審議会等に提出ずみの建物高さと採算性の関係資料 の公開)等の活動をしている。2月下旬には非公開の「情報公開・個人情報保護審査会」において意見陳述の予定。なお、 定かな情報ではないが、今年の秋頃に春日・後楽園駅前地区再開発の事業認可及び組合設立が予定されているようである。もしかしたら今春に早まる可能性もあるので、要注意である。

(E) 小日向プロジェクト                                お結びの会   荒木
 本日は代表者の出席はないが、「春日通りの街並みと生活環境を考える会」では、昨秋から都(都市整備局市街地建築部調整課)のあっせん制度を利用して、 都庁内で数回業者側と話し合いを続けている。しかし、双方の主張は平行線をたどっており、進展は見られない。

  (F) その他 

a. 教育センターター問題                              新大塚公園を守る会  小川さん
 文京区は、一般に企画部等の上層部で決めたことを与党会議等に下して内々に決めた後、協議会で区民に計るようなやり方をしてきた。教育センター移設の場合も 五中跡地に内定した後、協議会に計ったが、協議会の委員にはPTA が入っておらず、選任された6名の町会長も全て五中周辺の町会長であった。このように決定プロセス が不明朗であり、また、神田川沿いで新宿区に接したところにある五中跡地は文京区全体の児童が利用する教育センターの建設地としては適していないこともあったので 結論不能とし、福祉センターに関しては建設、運営主体を行政、民間への委託、いわゆる公設公営・公設民営・民設民営について意見が分かれたので、前例を破って票決 をつけて区議会に判断を仰ぐ型で差し戻した経緯がある。
また、五中横の住友不動産のマンション建設計画の折衝では、住民サイドのごく一部の人が、行きすぎた反対運動をし、かえって全体が不利をこうむる恐れが生じた。 市民運動における自覚と責任と情報の公開の重要性を感じさせた。

b. 産業振興について                  東京中小企業同友会文京支部 副支部長   奥長弘三 さん
 都市機能には、生活・消費と生産・労働の2つの側面があるが、今回の区の基本構想は、産業振興の扱いが小さく、生活・消費に偏っている。20年前には文京区は、 中小企業の町とも言われたが、今でもこの状況はあまり変わっていないと思われる。中小企業は無残な形で衰退し、全国的にも輸出型企業に依存しすぎた。政府は、 「中小企業憲章」を本格的にやろうとして、この5月に骨子を作ろうとしている。文京区も産業振興の扱いをもっと大きくすべきではないか。

                                                             以上(文責:荒木)