第15回《お結びの会》:交流会

1. 日 時:2012年6月3日(日)、13:30〜16:30
2. 会 場: 文京シビックセンター4階 シルバーホール
3. 参加者:40名
4. テーマ : 「文京区各地でおきている問題・その後の経過報告他」

5.議 事

司会 「お結びの会」 池田、並木

(1)湯立坂脇マンション・文化財(銅御殿) 
   杜史を育む会・湯立坂   広田さん

1) 銅御殿(あかがねごてん)とは :1912(大正元)年建設/文京区小石川の湯立坂にある/山林王・磯野敬が建てた近代和風住宅の傑作/今では失われた技術、 入手できない材料/2005年12月に国の重要文化財に指定
2) 重要文化財のすぐ脇にマンションを建設する計画が : 2005年12月、いきなり樹木伐採と「工事のお知らせ」/ 銅御殿の隣接地。わずか数メール/ビル風による影響が 心配/地下水の流れがとまる影響も心配
  3) なぜこんなことに : マンションの基本設計時に、隣に歴史的建造物があることを知らなかった/建築法制と文化財保護法制の隙間→「点の保護」から 「面の保護」へ転換が必要/無責任な行政=責任の押し付け合い
4) かなり追いつめた局面もあった : 2006年1月〜09年4月まで準備工事を止めた/2006年2月:準備工事を始めようとした野村・鹿島→文京区長を動かして、 阻止/2007年4月24日 衆議院の委員会でこの問題が取りあげられた/文京区議会でも何度も、この問題が取りあげられた/区のあっせんや非公式の交渉を重ねる/いろんな 人たちから野村のトップにアプローチ/2008年2月:一部修正案を引き出す
      5) でも、とうとう工事が始まった。: 2009年4〜5月:現場作業をめぐって業者と衝突/2009年6月:クレーン車の強行搬入→とうとう作業が始まった/2011年2月: 高層部まで工事が進む/2011年8月:一通り完成(現在も未入居) 6) いろいろな方面に働けたけれど: 文京区長・教育委員会・行政の窓口、区議会、東京都、文化庁、国土交通省、衆参国会議員(委員会全員)→いずれもあと一歩でものが動かない  7) 最後の手段:裁判で闘う(2種類の裁判):
a. 文京区と建築確認審査機関相手の訴訟:「建築確認を下ろしたのが違法」→2011年9月に判決。残念な結果
b. 文化庁相手の訴訟: 「業者に対する監督責任があるはず」→2012年2月17日に判決。残念な結果で「原告不適格」と。
  文化庁相手の裁判は→控訴して闘い中:
銅御殿裁判第1回控訴審 : 6月6日(水)午前11時〜11時半、 東京高裁 424号法廷(4階)
稲葉信子と広田淳子とが意見陳述。

(2) 順天堂キャンパスホスピタル再編計画   

  順天堂再編事業の問題点を考察するネットワーク    福嶋さん

  昨年6月以降、地元の2つの会の連絡責任者は、第3者的立場を変えようとしない施主の順天堂の立会人と清水建設と個人的に書類に押印したらしい。地元の住民 の会のかつて連絡責任者は、一方の会が、先に押印したから渋々押印したと釈明をしていたが、どのような書面かどうかも不明であり、何に合意したのか不明である。 勝手に雲隠れしているのは、強硬な姿勢を崩さない事業主側の姿勢に嫌気がさし、懐柔されたと思われる。かつてあれほど反対していた一方の会は変節し、順天堂 の傀儡になってしまったのだろうか?要するに連絡責任者が、切り崩された典型的な例であり、今後も様々な噂や臆測を呼ぶであろう。
旧5号館の解体工事協定は、その締結を住民らの前で行うものの、前述の2つの会は、新築工事協定は締結していない。公開できない協定や協議会なるものは、 公益の意味をなさない。個人的に金銭的解決を含むことも経済的解決を順天堂が示唆したことがあり、住民との話し合いも順序が逆である。住民の合意形成を捏造 しているのではないか? 個人的に切り崩し、範囲限定的な姿勢を絶対に崩さないのは、学校法人順天堂が、範囲を限定して、接遇向上近隣住民様向け診察券の試験施行からも明らかである。 何を理由にこのような範囲を限定した行為を行うのか意味不明である。
成澤廣修区長は、昨年の地鎮祭で、医療施設が多い文京区の中でも特別に区民の誇りになるような病院となることを期待していると言辞がある。特別に区民の誇りとは何か? ことさら順天堂を特別にと言辞した。それぞれの分野や強みで区内には、あからさまに特別と言わずとも最高クラスの優れた病院や医療機関があるのではないのか?このような 発言は、すでにデキレースごときの密約や特例(もっとも本建築は東京都総合設計制度)、順天堂と成澤区長が特別な関係を示唆しているのではないか?旧元町小学校を 順天堂再編のために、仮校舎として賃貸契約締結をしているのも、住民や町会員が知らないまま強行した結果である。
中長期計画(3号館8号館A,2号館の解体新築もあり、その解体した土地にも、土壌汚染がないとまでは言えない。)相変わらず、白衣と作業員が通る歩道交通や、 迷惑工事に対する問題点は、区道歩道橋同様、今後も注意し、警戒し、注意指摘しないと必ず事故が起きる。いや時間外に杭工事のトラブルが起き、作業中断をできずに、 順天堂の入院患者がいることや消灯時間を経ても、清水建設に深夜作業させたことを、注文者順天堂自身が近隣にまず説明しないその第三者的態度は到底許せるものではない。 処分庁や特定行政庁の審査や情報公開姿勢にも問題があり、その一例として、本件に関する陳情書などは、公文書として一部公開され、東京都から入手している。しかし、 合意書なるものは、一切不存在であるのに、都市整備委員会で、平成23年7月29日に2つの会は合意書を締結と砂川俊雄氏が発言している。処分庁は根拠のない発言を していることすら認識がなく、言語道断な支離滅裂なずさんな審査であると憤怒の念を隠せない当会の区民、支持者である都民らは多い。
土壌汚染改質変更が5月に終了したというが、歩道上に杭を打ち、埋戻し、舗装し、油坂に至るまで土壌汚染があったと説明が最近あり、文京区土木部の職員と実査を 行った。本地区だけでも相当数、順天堂が土地建物を買取り、集合住宅には、その関係者が居住するなどしている。このような独善的な学校法人による、再編や建て替えに よる住環境問題は当地だけの問題ではない。区内は、集合住宅などの建築建設があまりにも多い。今後さらに幅広く紛争が起きかねない。絶対高さ制限を意識してか、 容積率一杯に計画する業者の駆け込みが横行している。絶対高さ制限すら特例で無意味な高度地区が増えるであろう。
当ネットワークでは、多岐にわたり、東京都文京区における建築と行政に対する疑問や問題点、建築紛争がなぜ起きるのか?なぜ住民と良好な関係が消えていき、 古き良き文京区の環境が破壊されていくのか?他人事、無関心ではすまされない住環境の悪化という非常事態に警鐘を鳴らす。現区長の区政に入る契機および動機は、地上げ に対する反発が初期衝動であったと言われる。しかし、現状の文京区行政は、区民の意見や生活実感を与せず、 指導力を持たず、中立立場よりもむしろ事業者よりであり、あちらこちらのコインパーキングだらけや唐突な解体告知、建築標識を至る所に見ると、そこに何が計画 予定されているか、現在の住環境に影響がないのかどうか不安になるのが住民区民として当然である。輪をかけて嫌がらせのように投函される某不動産販売のチラシ 文句を見るたびに、地上げ不動産屋に対して魅力ある区である。日影を作る医療機関と近接で住価値があがるかどうかの根拠がないまま、開発転売業者に迎合するのか とさえ思えてしまう。区長には区民を納得させうるだけの説明や根拠が一切ない。一方的恣意的な特例行為には、断固抗議を呈したい。区長になるための信念や初心 を忘れたのかと疑念を抱かざるを得ないからである。
みんなが主役のまち ふみのみやこなのか?主役である区民が、医療機関や学校法人に住居の位置などを理由にそれらの事業者により意図的に差別されてはならないのである。
<添付資料:「B棟T期及びU期建設計画、土壌概況調査報告書に関する意見書」>

(3) 堀坂・六角坂の開発  

小石川二丁目マンションの無秩序な開発・建築を考える会    戸波さん

 <堀坂マンション反対運動の特徴と現況>
a. 発端は、小石川2丁目の1360坪(4500u)の道路つきの悪い傾斜地土地を事業者が2003年に坪300万円、45億円で購入したこと。 文京区は、堀坂が無償で拡幅されるために、事業に協力的態度をとる。翌2004年からマンション計画を始めたが、その後工事は止まったままになっているのは、 我々の成果である。これまでの経緯につては、別添資料参照。 地上9階(地下1階)と言う高い(32m)建物を建てる計画であるが、問題なのは、 建設の要件でもある堀坂の道路拡幅(4→6m)が業者負担であるため、文京区がこれを後押ししていることである。
b.  反対運動の第一段階は、原告勝訴。 業者に向かうとともに、文京区(計画調整課)にも向かう(住民の良好な居住環境を実現すべく、事業者を指導せよ)。
c. 2004年6月からはじまり、8年になる。この間、事業者はまだ建築確認申請をしていない。
d.反対運動は、住民運動の形態をとることもあったが、現在は裁判所、審査会での法律論での争いが中心となっている。いろいろな事査請求、訴訟を提起している。
e. 中心となっているのは、2009(平成21)年3月11日の文京区長による開発許可処分取消訴訟で、2010(平成22)年4月1日提訴以来2年余を経過し、まだ結審していない。
f.訴訟の過程で、開発許可の審査で、2m の切土の無審査が発覚し、そこを攻撃した。裁判官もその点に関心をもつ。文京区は答弁を変更し、窮地に立っている。
g.住民運動は、長期(8年)に亘っている / 事業者が説明をしたがらない / 法廷闘争の結果、事業者の工事計画が進まず、停滞している / 本命の建築確認に至っておらず、 その前段階の「開発許可」で争っているなどのため、盛り上がっているとはいえない。
h.今後の方針
 ☆ 訴訟での争いの継続
堀坂第2訴訟 第1回控訴審 : 2012年6月18日(月)、13:30〜、東京地裁第825法廷。
  堀坂開発許可取消訴訟(堀坂第1訴訟) : 2012年7月20日、11:00〜、東京地裁第705法廷。
☆ 開発変更許可の審査請求、建築確認の審査請求、訴訟も?
 ☆ 文京区の高さ制限の実施までねばる。

(4) 住宅地域の高さ制限について   

  本郷五丁目町会 町会長   松本さん

 本郷五丁目と言うのは結構広く、町名でいうと同志会、本郷五丁目、台町等六つの町会があるが、今示されている高さ制限は、22mである。 22mと言うのにはいろいろ問題がある。自宅は、100坪であるが、建蔽率:60%で60坪、3階建て(10m)で180%となるが、住民は、これで良い、 低くて良い、と考えているので各町会長の協力を得て、署名を取って6町会長名で下記の理由を付して陳情書を出した。
a. 当地は、明治以降文化の薫り高く、木造家屋1〜2階建てが多い。住民は、ここに住みなれて、平穏な生活を送っている。この環境は、 将来に引き継ぎたい。これが基本姿勢である。
b. 幹線道路から、住宅地に入ると落ち着いてほっとする。本郷地区のオアシスである。
c. 区が示した22mの高さでは、エレベーターをつけなければならないという煩わしさがある。
d. これが大事であるが、日影問題での紛争が十分予想される。22mというのは、現状の2倍以上の高さになる。多くの22m地域の皆さんが 何故黙っているのかなという気がする。一番恐れているのは、今まで培われてきた隣同士の住民間で争いが起きて、人間関係が失われることである。 こういう可能性が、十分に考えられる。
先日、成沢区長と都市計画審議会長に宛てた陳情書に対して、課長名で持ってきた区の回答書では、「本郷地区は、主として3階以下の低層建築物 が広がる中で4〜7階の中層建築物が見られる地域である」と記述されていたが、実際には7階などは無く、6階がたまにあるだけである。 陳情書は、再度を出すつもりである。

(5) 春日・後楽園駅前地区再開発 

            藤原区議

春日後楽園駅前地区第一種市街地再開発は、2009年に都市計画決定された計画である。そして今年の3月15日に事業認可及び再開発組合 設立認可が下りた。その後、2013年10月を目処に権利変換計画の認可を予定しており、今年の夏から2014年春頃にかけて実施設計を予定 している。この中でこれまで問題になってきた環境問題とか交通承認計画なども周辺住民との話合いや合意形成が行われる予定で、建築確認の申請 などもこの中で行われる予定。それが終わって2014年5月に着工、2018年7月に竣工予定となっている。 この再開発計画は、最初155mの超高層ビルが、丁度この区役所の向こう側の一画に建つ予定であり、西片交差点の脇ということで、第一種低層 住宅専用地域の西片のすぐ隣であることから、住宅街の方から高過ぎるという問題が提起された。シビックセンター側によっているならまだしも、 住宅地の方に寄って155mと言うのは余りも高いということで、当初予定より1年位遅れて都市計画決定されたが、その間何回も 「文京区の環境を守る会」と言う西片でつくった会で意見書や陳情書を出してきた。それらはすべて認められず、都市計画決定がなされた。問題は、主に風とか周辺 の交通処理である。風の場合、155m(途中で141mに下がった)の風害軽減の役目を果たす基壇部のない切り立った壁が幅50mにわたり、白山 通り沿いに連なる計画であり、又セットバックが道路から3mしかない(東京ドームホテルは、 基壇部があり、セットバックも20m)ので、風環境が悪くなることが予想される。そういうことを含めて、いろいろ不満があった。しかも資金計画では、 総工費は再開発としてはかなり大きく、750億円、補助総額はほぼ妥当だと思われる78億円(当初予想は100億円、内訳:国から46億円、都から8億円、 区から24億円)である。その後3.11があり、液状化とか長周期地震の問題がでてきたが、それには一切回答が無いままになっている。まだまだ問題は多いが、 これから実施設計に向けて説明会などがあるので、皆さんも注目していろんな意見を出してほしい。

(6) 小日向プロジェクト 

                       (春日通の街並みと生活環境を考える会  清水さん)

 下記の清水さんのメモを事務局で読み上げて報告した。
「昨年8月に、東京都に連担建築に対する審査請求をしてから、一年近く弁明、反論を繰り返してきました。ある建築家に本来は「取り消し」であって、 更地にしなければいけない、と言うことを聞きましたので、再度反論書に建築違反で「取り止め」ではなく、本来「取り消し」であるべき、と追求しましたが、 4月4日に弁明書4が届き建築違反したにもかかわらず、結果は「自ら取り下げた為、基準法に基づく手続きが完了した」と何処も何の処分もないままの、 相変わらずの返答でしかありません。
  その為、もう反論書ではなく、口頭審査に入ることにいたしました。何も光の見えないまま、口頭審査に入るのも悔しいところですが、残念ながらそれが 今の状況です。今回出席して色々と教えて頂きたかったのですが。 口頭審査は7月23日(月)になりました。何も分からないまま活動してきましたが、 長年活動を続けていらっしゃる皆様には、頭が下がります。本当に疲れますね。」

(7)小石川植物園周辺道路拡張問題 

                          小石川植物園を守る会   野上さん

植物園の塀を直すという名目で始まって、結局今は道路の拡幅になってきている。工事は大分進んで、御殿坂の塀は終わってしまった。その後の工事を 本年度中に始めるという段階にきている。これは700mに及ぶ工事であるが、なんとか阻止するため、署名活動を始め、12,000名分を提出した。 しかし、区も東大もなかなか動かないのが現状である。なお、昨年の地震による古い塀の損傷は、ひび割れ1枚だけであった。なお、取替え対象の御殿坂 の塀は、数年前にも改修している。また、塀の近くには中国産のエゴノキを含む多くの樹木があった。並行して園内では発掘調査も行われた。 塀の取替え工事に伴う掘削工事は、一部では歩道拡幅のため、計画(2m)より広く3m、更に塀の基礎のために2m、合計5mも削ってしまった。工事 後の塀の内側は、写真(左)のように植物は全て取り払われている。まるでグランドである。とても植物園で行う工事ではない。公示後の外側の写真(中) から分かるように歩道を広くし、桜の木を植える計画となっている。植物園を減らして何故外部に植栽するのかという馬鹿な計画である。なお、東京都は、 緑を減らすなとの指導をした。植物園を残す方がよいと言った。
   西側の今度工事を始める予定地(写真右)は、こんなに広く人通りが少ない。茗荷谷から来る人は、播磨坂を通ってくるので人は通らず、車も千川通りがある のでここを通るのは、工事車両のみである。従って道の拡幅など全く必要が無いのにやろうとしていることが明らかなので、更に署名を集めてゆきたいので、 ご協力をお願いしたい。

       (8) 本駒込6丁目マンション建築計画  

       本駒込   尾留川さん(補足:水島信氏)

 12月4日に合同説明会が打ち切られ、1月6日にあっせんがあった。(これは1回だけ) 2月8日に建築審査請求をし、5月22日に口頭審査があったが、 あっけなく終わってしまった。今後のことは、弁護士に相談してゆく予定である。
 現場は、既に着工しており、1階(2階床)部分の配筋、型枠工事が終わり、週明けにはコンコリート打設の予定となっている。 そもそもこの問題は、 敷地内に道路の拡幅予定地が含まれていることであり、道路が、拡幅すれば、容積が42%オーバーになる。この辺りの建ぺい率400%の42%オーバーだから 周辺よりかなり大きいものが無理やり建つので、我家などは真っ暗になってしまう。六義園側から見ると図のようになるため、日差しも風通しも遮られる ことになる。
 この道路は、第三次優先整備路線 都-30 となっており、H27年度優先整備予定である。このため、今年から来年にかけて順次決定されてゆくが、 決定が遅れると、(もうすでに2件、道路予定地を利用して駆け込み建設が計画されているように)、既存不適格建築物となることが予定されている建築 を許してしまい、決まれば、もう建てられなくなるので既存不適格建築物の建築続発を阻止することがでる。実際、地権者の方々も道路拡幅の署名を積 極的になさっているが、建築問題と絡ませたくないのか、自ら陳情するという気持ちはないようである。地権者の方達の協力があれば効果的であるが、 私達は建築問題を抱えているので、表立って行動するのには、躊躇いがある。署名を集めて、陳情し、早く拡幅決定されるのを願うばかりである。 この 問題は周辺住民だけでなく、マンション購入者にとっても、問題で、糧替えが必要となっても、出来上がり時の容積の42%は、再度は得られない。
<補足:水島氏>
尾留川さんは遠慮しているが、これは基本的人権の問題である。現状でもとなりのビルによって尾留川さんの建物は半日しか陽が当たらない。新たに 前にビルが建つことによって雪隠詰めになってしまう。そして基本的には、このビルの2/3以下の部分には陽が当たらなくなってしまう。ということは、 尾留川さん達の生活権がここで無にされている。それを認める日本の法制度は、弁護士に話すと順当であるという。この人達の基本的人権はどうなるの か。基本的な問題は、ここに住んでいる人の生活権=基本的人権が全く無視されても認容されてしまうのが日本の法制度である。つまり「生きなくても いい、お前たちは」という法制度である。それが問題である。
  この地域は、用途地域が商業地域であり、住み始めた頃はたかだか住居地域であり、これが近隣商業地域になり、今は商業地域となっている。何故商業地域 になったかと言えば、「建てさせろ」と言う行政の意図があるからで、住民の意図は全く入っていない。ドイツでは、土地利用計画を変更する場合には、 最初と最後(議会を通して)の段階で住民の意思が入る。日本の場合は、住民の意図を全く無視して勝手にかえられて、知らないうちに商業地域になって、 建ぺい率、容積率が格段にあがって、酷いのは日照規制がゼロだということである。商業地域の禁止項目に住宅は無いので、商業地域にも住宅はつくれるが、 何故日照権がないのか。これが、人間が住むということをまったく考えていない日本の法制度なのである。酷いのは、これが認められれば隣のビルの前に も建物が建てられる。従ってこの後ろに建っているビルは全て壁に塞がれる可能性ある。つまり、雪隠詰めになりうるということである。こういうことを 文京区は用途地域で認めているということに全然危機感が無いということである。その現状がいかんのである。本質的には、高さ制限とかの問題ではなく、 用途地域制の容積率が問題である。そういう人間の生活を無視するような法制度が日本ではまかり通って、弁護士がそれについて何も言わないことがおか しい。弁護士達にも話したが、日本の法制度は基本的人権を無視したものである。人が都市の中に住んではいけないというような法制度を認容していると いうことである。それと住民が意識を持って、こういう制度のためにこういう社会になっていることがおかしいと言わなければならない。

 (9) 関口の目白坂計画    

  目白坂の住環境を考える会 野口さん

関口の現状は、幸いにも全く手つかずの状況であり、木がうっとうしい位に茂っている。椿山荘にお見えの際などには、是非、山のような緑を見て欲しい。 何故建たないのかということについては、担当しているセキスイハウスのマンション事業部が大きく組織変更で縮小されたことなどにより、手つかずに なっているのではないかと推測している。我々は、1月に裁判にかけ、開発の確認取消し訴訟を行っていたが、残念ながらこれは負けてしまった。結果的 には、文京区の主張は退けられ、我々が主張した通り、原告適格は認められたが、次の段階である崖地の危険性、水の災害に関しては証明する手立てが薄 いということで残念ながら却下されてしまった。本人訴訟で闘うためには、我々が実験をして証拠を裁判所に出さなければならないので、どう考えても、 市民が崖崩れの実験をするとか、強度計算をするとかいろいろ試験をすることは不可能なので、上告することを諦めた。開発に関しては諦めたが、並行し て建築確認取消し訴訟を行っている。去年の9月28日には地裁に訴状を上げて、今回は弁護士の先生にお願いして、今訴訟中である。今、3,4審をやって いる最中である。今回の争点は、基本的には一団地認定の高さ緩和が論点になっていると思う。実際には、この地域は本来一種低層という一番住居として 保障されるべきところであるにもかかわらず、12m以上の建物が建ってしまうことを論点として地域の方で訴訟している最中である。

 (10) 小日向一丁目マンション建設問題 

小日向の環境に配慮した街づくり住まいづくりを守る会   檀野さん

この小日向1丁目72番(第1種低層住宅専用地域、元塩野義製薬保養所)に計画されたマンション(敷地面積:1,602u、建築面積:1,114u、地下1階、 地上3階、総戸数:35戸)の建築主は、三菱地所の100%子会社である三菱地所レジレンス鰍ナある。地域住民は、当初、三菱地所がやるなら問題ないだろうと 考えていたが、いろいろ説明を聞いているうちにこれは大変、とんでもないということになり、反対運動が始まった。争点は、2点あり、一つは住環境保全の問題で ある。区の都市マスタープランでは、「戸建住宅を中心とする閑静な低層住宅市街地として住環境を保全する」と言っているが、航空写真を見ても分かる通り、この 建物(MI)は、まわりと比べて巨大で真四角で無骨なマンションである。 これは、住宅地に調和せず、また、非常に圧迫感を感じるということで反対している。もう ひとつ、この建設現場は、キリシタン屋敷のど真ん中にあり、街歩きの人が多く集まる歴史・文化的資源を活かした街づくりが望まれているのに対し、全くそういう 配慮がなされていない。また、マンションとしても南北に細長い、日当たりのない狭小住戸が多くて、将来、賃貸マンション化に伴って空家化する恐れがあり、コミュ ニティ崩壊につながるおそれもあるため、反対している。
 もうひとつの大きい争点は、工事の問題である。工事計画では、この辺りでは例のない敷地内全面掘削をするということであり、大量の土砂が発生し、搬出しなけれ ばならない。このため、4トン車で1日100台、重機を運んで来れないので、公道を自走する計画になっているが、これは法令違反であることがわかった。また、全面 掘削のため敷地内に工事現場がとれないため、道路を使用するということで、狭い道のため実質的な交通止め状態になってしまう。
 この辺りは、江戸時代の町割であるため、道路が狭小(約4m)で生活道路であると同時に通学・通園の重要な道路になっている。このため今問題になっている通学路 の悲劇が懸念される。これまで別表に記したように、戸建分譲案の提案、文化財の試掘調査請求などいろいろ運動を進めてきたが、業者側は原案に固執している。5月 に要求していた「新提案」が出てきたが、地下のドライエリアを止めるが地階全面5mの掘削は変更していない。南・東・北面の敷地の一部を提供し、歩道にするとし ているが、これは一見譲歩に見えるが、建物部分は全く変更なく、緑化部分を削っただけである。 また、埋蔵文化財調査は、試掘調査が終わって本格調査をやるとい うことになっていたが、結局、工事の話合いがつかないうちはやりたくないと言っている。なお、業者側は、違法は承知だが、地域住民の承諾を得て4トン車を使用す ることを「新提案」の前提条件としている。住民側は、違法なことは承諾しない旨の内容証明文書を送付した。合法な車両を使用してできる範囲の建物にすべきだとい うことで、現計画の白紙撤回を要求している。これに対する返事はまだ来ていない。話合いでやるということを原則で申しつけている。確認申請はまだしていない。なお、 合意出来ないうちは、確認申請を出さないとは言っている。行政の姿勢は、やはり、マスタープラン推進と言いつつも指導は非常に弱く、全くの及び腰である。区議会 議長及び与党は完全に業者よりであり、茗荷谷町会も中立と言いつつも業者よりである。一部には、地域住民のエゴとの話もあるようだが、我々は、 フェイスブック(http://facebook.com/kohinata.bunkyo)ブログ(http://kohinata244.blog.fc2.com)も利用して、広報活動をやっているので関心を持って見て欲しい。

 (11) 文京区 保育新システムの問題点 

            文京区職員労働組合     鈴木さん

私は、文京区職員組合の保育園分会に属している。我々は、子供たちが豊かに育つ環境を守りたいという観点から訴えたい。配布資料にある子ども・子育て「新システム」 は、今までの保育園を運営してきた制度を根本から変える制度であり、「税と社会保障の一体改革」として今国会審議中の法案の中に盛り込まれているものである。 この新システムの当初の理念は、全ての子供達に平等に保育・教育をという素晴らしいものと思うが、この法案の中身は大変複雑になってきている。 文京区でも保育 園に入れない子供が今年4月に110名を越えたが、目玉のひとつであった「待機児童解消」という問題一つをとっても、この法案の中身では、解消につながらないのでは ないかという点が多く含まれている。たとえば、子どもが日々の生活の積み重ねの中で豊かな発達を保障するということで保育をしてきているが、そこが崩されてしま うのではないかという危機感を抱いている。区内には我々が働く公共の保育園、私立の保育園があるが、そこは認可保育園ということで国が補助金(補助金が補助金で はなくなっているが)を出し、保育を受けたいお子さんには、必ず市町村が保育を受けさせなければならないということが児童福祉法24条に規定されており、そのため に区は保育園をつくり、子どもたちを保育園に入れなければならないと規定されている。そこをまず崩そうとしている。そして崩してゆくことで足りなくなる分を企業 にどんどん参入してもらい、企業立の保育園でも良いのではと言うところである。ただ、現在、実際に区内にも私立の保育園があるし、民間の保育園でもしっかり保育 を行っているところもあるので、そこを全否定するものではない。ただ、やはりいろいろな例があり、例えば中野では、企業立の保育園で、迎えに行ったら、明日から もう退園しますというようなことをされたところもある。やはりどんな企業が入ってくるかわからない。その企業がどんな保育をするかということが、大変不透明な中 では、それを参入させることはどうなのかということと、あと、今までは企業立の保育園も儲けを保育園にしか使ってはならないということであったが、そこを緩めて 株主にも利益を提供しても良い等保育以外のところで大きな不安を持っている。新しいシステムになると言うことは子供達が本当に保育を受ける権利がすごく侵害され るのではないかというところの心配があり、これを是非止めてゆきたいと思っている。今、別紙のような署名活動も行っているので協力してほしい。

 (12) 町会と町会連合会って知っていますか? 

 前小日向台町 町会長      小川さん

小日向台町に町会長を7年間やってきたが、その間市民運動に町会として加わったりして、行政といろいろ折衝してきた。その中で町会と言うのは本当にもう区政の 中で都合よく使われている存在であることが良く分かった。ただ私は、その中で最大限の当たり前のことをやってきたが、非常に怒りを買って、いろいろ物議をかも してきた。配布資料の文京区町会連合予算のうち、事業収入は、自分達の会費でやっているが、区の補助金の179万円がどう使われているのかをみると、町会功労表彰 に70万円(表彰状とガラスケース)、施設見学会に49万円(7,000円/人x70)出ている。今年の施設見学会は、老人快適発想で、足利学校(「中庸」等の講話) であった。なお、区は、町会連合と地区連合に400万円近くの補助金を出しているが、領収書は一切ない。支払は年度はじめであるが、投げ与えていてそのまま使われ ている。さらに酷いのは、大塚地区町会と言うところでは、地区町連の会長が三十数万円のお金を2つの口座に分けて振り込ませて、その一つしか我々会員にはみせない。 そして10年以上前から、自分達の町会のために使っていることが判明した。町会の体質とはこういうものである。その連中が区のいろんな審議会の委員になっている。 審議会の委員の構成をみると、そこに必ず町会連合とか地区町連の会長が委員として出ている。よく原子力の問題などで「やらせ」が話題になっているが、文京区の 場合はやらせどころではなく「飼いならし」である。助成金と言うのは、100万円の計画ならばこれを見せて30万円欲しいというのが普通であるが、文京区には そんなものが無いので、この30万円を何に使っているか不明である。交際費に使っているかもしれない。そういう状態でやっている連中が、文京区の審議会に出ている。 これをどのように直すかと言えば、情報公開にどんどんかけること、会計監査にかけることであり、同時に皆さんにも是非地区の町会の総会などに出席して、意見を きちっと言う。そして裁決をきちっとしてもらうという運営をしないと駄目である。小日向台町の町会は、先程話題になった小日向1丁目の隣にあり、一種住専が一緒 の地域であるため、その動向に注目している。化石のように20年〜30年間、同一の人物が町会長をやっているような町会では、地域の問題について的確に住民同士 の意思疎通もできないし、集会さえ認めず、掲示板も自由に使えないという町会もある。もうひとつ、町会長とその夫人が両方とも役員をやっているような町会は、 私物化されており駄目である。役員は世帯で1人しか出せないということで闘ってゆくだけでもずいぶん変わる。

 (13)  地下鉄春日駅の障害者対応  

              西片   宮下さん

私は、西片の交差点近くに住んでいるが、地下鉄の入口にエレベーターがないのが一番の問題である。自宅は、歩いてゆけば駅まで3分のところであるが、障害者となり 車いすを使っているため、駅に入るのにはシビックセンターまで行かなければならない。ここのエレベーターも混雑しており、使い勝手も悪い。都営三田線の春日駅は、 都営線の中でも数少ないエレベーターやリフトのない駅である。先程のエレベーターは、三田線のためのものではない。子どもが小さかった時にはバギーを持って階段 を上がるのは大変であり、10年以上前からエレベーター設置をお願いしてきたが、「善処します」と言うだけで一向に進展が無い。ただ、いくつかある出口の内 3ヶ所(シビックセンター、区民センター、自宅近くの西片)は、区や都の敷地だと思うのに、そうした状況にあってなお設置されないのは、 異常な感じがする。皆様のお知恵を拝借したい。 (文責:荒木)


  ≪講演会≫

「基本的人権を侵害する日本の都市計画制度」

ドイツ・バイエルン州建築家協会会員 水島 信 氏

 ドイツでは普通の人が普通に考えておかしいと思うことは許可されないが、日本では普通の人が普通に考えておかしいと思うことでも認可される。ドイツの都市政策は、 常に国民、市民または住民の方を向いて計画決定される。その過程の中で、住民参加が重要な意味を持つ。民主主義社会では住民に不利になることは基本的にあってはな らないという理由からである。これに対して日本では、他人の住む権利を蔑ろにして、自分の利益の権利のみを優先する建設行為が、関連法規及び条例等を遵守した計画 として認可されるというように、基本的人権を侵害する行為が法に則っているという異常さで、その異常さを増幅するように「知らせないのは悪いことをするから」とで も言えるような都市政策を推進する行政の「民に知らしめず」という前時代的で非民主的態度である。
徳川の時代の薬草園であった小石川植物園では、既存のコンクリート塀の耐震強度を高めることと、遊歩道整備で歩行者の利便性を高めるとする目的で、南東と南西の塀 を植物園敷地内に移設して周辺道路を拡幅する工事が現在進行中である。その過程で、日本では希少価値の日本名の無いAlniphyllum fortune (hemsl.) Perk.(エゴノキ科) や、絶滅危惧種の植物等が多量に滅ぼされている。約四千種の植物が植栽された植物学の教育・研究を目的とする東京大学の研究施設で、このような学術的非常識が進めら れていることに、日本の最高学府の常識を疑わざるを得ない。一方、文京区はこの植物学的庭園を都市計画法規定の都市施設公園と定義して、植物園用地のコンクリート化 を推進しているが、学術的研究施設を都市施設とすることの都市計画政策の行政的専門性を疑わざるを得ない。
小石川植物園を守る会は、塀の改修や改築と歩行者の快適性を向上させるための道路改修には、道路を拡幅する根拠にはならないからそれには反対はせず、武蔵野の原植生 の樹木や植物学に重要な標本的植物が伐採されることと、元来通行する車両も少ない道路を拡幅する必然があるのかということを問うている。そして、植物園は子供たちの 授業から大人たちの趣味の学習までを対象とした施設であるから、樹木の伐採は中止してほしいということと、道路拡幅で今まで歩きやすかった路が通過交通量の増加で歩 き辛くなったり、住環境が劣悪になったりで、住民に不便さをもたらすから計画を考え直してほしいと要求している。この当たり前の要求に、文京区は、その内容が住民に は全く説明されていない未知のもので、その協定の根拠すら不明確な「東京大学との基本協定」を盾にして、区民の質問と要望のすべてを拒否するという傍若無人の態度を 執り続けている。
「文京区都市マスタープラン2011〜協働で次世代に引き継ぐ〜安全で快適な魅力あふれるまちづくり」の巻頭には「豊かな緑と変化に富んだ地形の中に、歴史と文化が 香るまちの魅力を次世代に継承できるような街づくりを、区民の皆さまとともに進めていきたい」とある。そもそも、小石川植物園の樹木伐採は「緑地の減少、アスファル トやコンクリート面の増加、建築物や自動車からの廃熱の増加などによるヒートアイランド現象が、東京の気温の上昇や局所的な豪雨の大きな原因になっていることが問題 となっているため、文京区のまちづくりにおいては、低炭素型まちづくりやヒートアイランド現象の抑制に取り組むことが必要」とする方針に背くことである。したがって、 区民の植栽伐採を伴う道路拡張計画を止めてほしいという要望は文京区の指針に適するものであり、これを却下するのは区の都市計画基本方針と矛盾していることなのである。
「区民等が自分達の町をより良いものにしていこうという積極的な意思をもち、区民等と区が協働するまち」と区民との協働という指針はマスタープランの各所に記されてい る。小石川植物園を守る会の要望は、まさしく区が区民に要望する「自分達の町をより良いものにしていこうという積極的な意思」の表現であり、行政が区民に期待すること なのである。したがって、この要望を否定することは行政執務の職務怠慢以外の何物でもない。さらに、マスタープランの実現化に向けて、区民等と区の協働によるまちづく りの推進により、区民等と区は役割と責任を分担し、相互に連携して協働のまちづくりを行うと詳細に説明されている。しかし、いくら区民が積極的に提案や意見を述べても、 行政の門前払いの態度ではマスタープラン上の“理想形”は成立しない。

日本の非民主的で人民不在の政策は用途地域制に具体的に表現されている。諸悪の根源は容積率数値にある。本来、容積率は居住環境の最低限の快適性を保証する採光、日照、 通風という条件を確保するために、その土地利用に応じて規定され、それに適応する道路と都市供給施設の設置が行政に義務付けられている。
 最近、巨大な共同住宅の建設によって、周辺区域への日影や交通量増加等による居住環境への弊害を懸念して、住民の反対運動が日本の各地で起こっている。その反対運動 は正当であるが、単に建設物の高さのみが批判の対象にされて、建物そのものの容積による環境への悪影響という基本的な問題が議論されていない。周辺地域への 日当たりに議論が偏重し、日照権と建設物の高さ制限に焦点が絞られ、何故その高さにすべきかの議論が為されていないようである。故に、単に計画された建物の高さを下げる ことで妥協が為され、その妥協は、住民側には自分達の意見が認められたという満足感と、行政側には一件落着の安堵感があるのみで、悪く言えば住民の口封じだけの結果でし かない。しかし、高さが半分にされたとしても問題の根本は解決されていないのである。
問題にすべきまたは議論すべきは、自分達が慣れ親しんできた環境の秩序とかけ離れた次元の建物が建設されることによって、それまで培われてきた生活空間にもたらされる悪 影響を如何に排除するかということにある。異分子によって「おらが街」が異質になり、住民の帰属性が徐々に薄れていき、自分達が根なし草にならないための議論をするべき で、そのためには「我が街」の環境に適する容積率での建設を要求すべきなのである。
 東京都下の市街地の工場跡地での巨大共同住宅建設に対して起きた住民運動の根本的原因は、周辺地域が建蔽率40%で容積率80%の第一種低層住居専用地域であるにもかかわら ず、工場移転の段階で建蔽率60%、容積率300%の準工業地域指定をそのまま残したという行政の職務怠慢にある。跡地一部の約1.3haの敷地に既存する507戸の共同住宅は建蔽率35%、 容積率325%である。一戸当りの居住者2人がこの市の平均値であるから、この共同住宅の人数は1014人で、密度は約780人/haと過密の状況となる。この都市政策の過失を修正する には、残りの約2ha の敷地を緑地等の空地とするしか方法がないであろう。何故なら、それであれば約300人/haで容積率は130%となり、跡地内での住環境の快適性はほぼ確保でき、 周辺地域とのバランスもとれるからである。
しかし、現実はその都市計画的過ちの上塗りをするが如くの、更なる525戸、建蔽率57%で容積率290%の巨大共同住宅建設が進められている。この建設でこの区域の住環境を更な る過密化によって劣悪にするということは確実であるから、周辺に住む市民のこの建設に対しての異議申し立ては正当である。しかし、ここでも高さ制限に矛先を定めるのには疑問 がある。何故なら、高さを半分にしても建蔽率と容積率が変わらない限り、高さ半分の建物容積は建蔽率の余裕の部分に横の拡大で建設されて、敷地内が中高の建物で一杯に埋ま るという、環境改善には何の効果もなく、縦と横の違いはあっても、巨大建設に因る弊害はそのまま残るからである。
 日照の紛争が高さ制限に発展するが、商業地域では日影規制はない。住居に必要な日照権は認められていないにもかかわらず、商業地域では住宅は建設禁止項目ではないという 法的矛盾がある。故に、容積率の高い商業地域ではその利益還元の効率が良さで巨大な共同住宅が多く建設されている。そもそも、一日何時間の日照があれば十分という規定自体 が非常識であるから理解には困難が伴うが、人間の生活の場所に日照の必要がないという制度は、人間生活を全く無視したものであるということは確実である。その商業地域の指 定を住民が享受しているという反論があるだろうが、それを活用できるのは新参者のみで、先住民には利益は少ない。
それどころか、用途地域の変更によって、建蔽率、容積率や日影規制などの緩和により、以前からの居住者の生活権や財産権などが侵害される建設が、緩和での変更された法制上 で認可されるという、異常な事態が発生している。加えて、この変更は行政による決定で、その説明会と公聴会には住民が参加できて意見も出せるが、個別の応答義務がなく、採用 するか否かは行政の裁量となっていて、住民が権利を主張できる構造にはなっていない。つまり、変更が民意の欠如したところ、住民不在で決定されている。ドイツでの土地利用の 変更は、自治体が開発計画の必要性に応じて土地利用の用途変更を議会に提出し、議会がそれを議決して法的効力を持つということになっている。当然、自治体が計画を立ち上げ時 点で住民公聴を行うので、土地利用変更が起きた時点で直接的に、議会議決される時点でも間接的に、住民の意思が反映される制度というのと大きな格差がある。