第1回《お結びネット》:交流会

1.日時:2008年3月1日(土) 午後6時30分〜8時45分
2.会場:区民センター2階 2A会議室
3.参加者:48名
4.主旨:区内各地で起きている高層マンション・ビル建設、環境、景観の悪化に対する区民運動の状況・課題・問題点を交流する。
5.経過
(1)開会挨拶及び司会進行:若月さんが担当、進行した。
(2)経過報告:橋本が資料に沿って要点を報告した。
(3)各地域の区民運動からの報告:以下の5氏から報告願った。
(4)報告後、質疑応答・参加者よりの発言の場を設けた。
(5)まとめ及び閉会挨拶:大村さんが行った。

6.各地域・グループからの報告(要旨)

(1)「元町公園と小学校のその彼の近況報告」    報告者:ぱばっと会議@元町公園 鹿野さん

要旨: 最初に、元町公園問題とはどういう問題かについて報告があった。次いで、近況報告が話された。

  @ 2007年夏、都市計画審議会で文京区の計画は事実上差し戻された。このことが持つ意義は大変大きなものがある。通常、行政が都市計画の変更を 審議会に掛けた場合、十中八九、原案通り採決される。いわば審議会は行政が準備したものを採決して決定する機関といってよい。それが差し戻しに なるということは、恐らく全国で初めてのことではないか。

A これを受けて、文京区は体育館の移転先をどうするかについて審議会をもち、旧4中跡地にするとの結論に達した。成澤区長は区議会でもこの結論 を尊重すると述べているし、19年度予算に計上されていた元町小学校解体費を執行しないと言明している。20年度予算にも計上していない。従って、 当面すぐに元町公園に対して何かをするということは免れたといってよく、幅広い区民による運動は目的を達成したと言える。

B これに関連して、公式の報告はどこにも存在しないが、「ふるさと歴史館便り」訴訟の判決が去る1月25日に出たのて申し添えておく。この訴訟は、区が 毎年1回発行する「ふるさと歴史館だより」という広報誌の昨年度号に元町公園の紹介が掲載されるはずだったのが、削除されたことに対する裁判。 印刷会社から納品される直前に廃棄処分となり、記事が削除された新しい版が刷りなおされたのである。私たちは住民監査請求を経て、訴訟に持ち込んだが 、結果は訴状は棄却。司法の世界では社会正義を問うのは難しいのだとあらためて思い知ったが、裁判の進め方についてそれなりに学習させていただくいい 経験になった。裁判までする覚悟で元町公園の都市計画変更をストップさせたいという区民の思いの強さは十分アッピールでき、実際、都市計画審議会 でも区案は差し戻されたので、その点では大きな成果があったと考えている。

C 今後どうするのかという課題についてだが、元町公園と元町小学校再生に向けての「第2章」がはじまったのだという認識を持っている。 差し当たり、3月9日(日)に公園と外堀通りで『元町みちくさ花家族』というイベントを開催し、花壇づくり・花そだてのプロジェクト (東京都公園協会の助成)を立ち上げる。そうした機会などで地元住民や区職員、区議、区長等とよく話し合って方策を考え、取り組みを育てている。

  

(2)「湯立て坂脇マンション問題について」   報告者:杜史(とし)を育む会・湯立て坂 池田さん

要旨

@ 冒頭、湯立て坂マンション問題とはについての説明があった。関東大震災にもビクともせず、重要文化財にも指定された立派な門、銅がねで葺かれた 建物(通称あかがね御殿の謂れ)に近接する土地に野村不動産が地上14階、地下2階建てのマンションを建設しようとしていることに対し、地域住民とし て、景観が損なわれる点、植栽を中心に自然が破壊される点等から反対運動を展開している問題である。

A  環境を守ろうとする人たちで「環境を守る会」が結成され、署名活動をし文京区長に提出した。一方、建物がすばらしいということで建築学会、建築 についての有識者の方々も動かれて、1万名以上の署名を集め文化庁に嘆願書に添えて提出したりもしている。

  B これに対し、野村不動産側は住民説明会を開いたものの、非常に限られた利害関係者、人数制限をしたりして多くの住民の納得を得られぬままに推移 してきている。そうした中で、住民と野村不動産との間に文京区が入って、2006年に6回会合が持たれたが歩み寄りができないまま来た。その後07年 12月に入って野村不動産は工事を始める旨近隣住民に通知して来た。これに対し、住民側としては、まだ問題は解決していない中での工事は許されるべき でないとして、文京区長を通じ中止を申し入れた。07年に入ってからは−度も話し合いが行われずに終わった。一方、野村不動産はあかがね御殿所有者 大谷家と話し合いを持つているが、進展を見ず歩み寄る余地がないままで推移している。

C その後、08年1月にようやく第7回目の話し合いが持たれ、2月に第8回目がもたれたが、2階分低くするとか耐震構造を強化したとか、外壁部分の 植栽を残すように工夫をしたとか提案してきたが、私たちが求めていることが満たされていないので受け入れを拒んでいる。私たちの基本的要求は、低層化 もさることだが、データの開示にある。とくに地下水についてのデータを求めているが、何の開示もしていない。地下水の問題は周囲の自然を守る上で最も 大切な問題として引き続き求めていくことにしている。

D こういう運動はより多くの人にまず知ってもらうことがポイントとなるということで、いろいろイベントを組んで楽しくやってきている。シンポジウム、 勉強強化のほか、ヒューマン・チェーンということで周囲1kmを人の環で囲んで行進したり、近隣のお宅を会場に音楽会、落語の会、餅つき大会などもして いる。中でも、広島県広島市の市長をお招きしての勉強会の企画では、残念ながら市長にはお出まし願えなかったが、ビデオメッセージを寄せてくださり、 その中で励ましとともに、“自分たちの町は自分たちで守らねばならな”と示唆してくださったのが印象深い。国立市の「景観ネット」と連携したりマス・ メディアにも取り上げられるようにしながら、アノ手コノ手で少しずつ世論を動かしていくことが大切だと考えている。最近のことだが、文京区の景観賞に、 この湯立て坂がえらばれた。そういうすばらしい環境を守りたい。

(3)「本郷赤門脇マンション問題こついて」     報告者:本郷赤門周辺の景観を守る会 松本さん

要旨

@ 問題の所在と住民が要求する根拠について鋭明・報告が行われた。歴史的にも文化的にも由緒ある地域にニューヨーク市のような23階建ての超高層マン ションは明らかに景観を損ねる。そればかりでなく住民の生活にも大きな支障をきたす。建てることに全面反対しているわけではなく、当初の14〜15階建 てにとどめるべきだ。

A 反対運動の推進状況については、本郷5丁目朝会をはじめ3町会で実行委員会を構成、宣伝活動、ビラの配布と署名活動、区議会への請願」野村不動産への 対応、マスコミへの働きかけ、勉強会・講演会の企画実施等々を進めている。

B 文京区の対応はどうだったかについては、湯島・本郷36町会をバックに区に要請活動を行い、成澤区長は前向きに対応してくれている。請願も受理される とともに、区長から野村不動産に対して住民の声も聴き再検討しなさいと口頭で伝えてもらったりしている。また、区長から野村不動産宛に要請文事も出してく れてもいる。

C 運動の現状については、文京区議会、与党区議6名が仲立ちして話し合いが持たれ、23階案から21階案へといった案が提起されたと聞いている。これに 対し当会では問題外と受け止め、設計士に依頼し当会なりの独自建設プランを野村に提示したが、10日間が経ったものいまだ回答に接していない。なぜこう なったかというと、野村とすれば金が儲かったらよいわけで、最近市谷での売買事例として3億円の部屋が即日に完売したのに味を占め、当初のワンルーム形式の 14〜15階建てでなく、面積を広げ赤門とか周辺の景観を売り物にして3億円で売れるものを20部屋、2億円で売れるものを20部屋、1億円で・・・・と いったように値上がりに付け込んで考えているものだから、中々譲らない。

D 今後の見通しとしては、区長をはじめ、区議さらには鳩山、深谷両議員にも助力をお願いしているので、まったく譲らないという訳には行かないと思っているが、 時間がかかりそうだし、全く先行き不透明だ。本郷通りの高さ制限を条例化しようという方向で動いている。

(4)「小日向プロジェクトについて」   報告者:春日通りの街並みと生活兼境を考える会 坂口さん

要旨

@ 小日向プロジェクトとは、春日通りをはさんでSANTOKU小石川店と反対側の、以前、文京信用金庫の本店(その後、朝日信用金庫小石川支店)があった土地を 中心とするエリアに24階建てのマンションを建設する計画のこと。デベロッパーは東急である。

A 他の事例を違って特徴的なことは、デベロッパーが空中権を利用し「連坦」という制度(注)を使って高層建築を建てようとしていること。つまり、建設区域 がA=レクサスという3階建ての自動車ディーラーの土地とその裏側の空き地のB、として最も広い元朝日信金の敷地をCとして3つに分かれており、A+Bの空中 権をCに集中して24階という高層ビルを建てようとしていることにある。

  (注)「連坦建築物設計制度j(建築基準法第52条の2)。通称「連坦」といわれているこの制度は、既存の建築物の未利用容積率を隣接地へと移転できる というものである。

B 現状ほ、SANTOKU上階に住む住民と隣接マンション住民の有志であの土地には高くても10数階の建物しか建てられないとし住民税明会で強く要望したが、東急側 は計画通り実施すると譲らない。そのため東京都に計画の見直しを指示して欲しい旨の審査請求を求める書面を提出し受理された。今後は「連坦」制度の適用、解釈 をめぐって中高層建築物の建築にかかわる紛争の斡旋、調停という方向へ進んでいくことになると見込んでいる。

(5)「新大塚公園の2年間」      報告者:新大塚公園を守る会 小川さん

要旨

@ 最初に多くの方々、元町公園関係者の運動に勇気付けられて運動が成功裡に推移したことに対するお礼が述べられた。次いで、新大塚公園問題とはどういう問題 だったのか。住民がどう対処したのか。その結果、当面どのように決着を見たのかについてプロジェクターによるスライドを活用しながら説明、報告された。

A 問題の核心がどこにあったかという点について補足された。

a.文京区の小・中学校の統廃合問題があった。
b.それとの関連で町づくりのなかの防災拠点の確保の問題もリンクしていた。さらに
c.公園をなくす、移転するという問題があった。
これらの3点は総合的につながりのある問題として捉えられなければならなかったのに、文京区はビジョンはおろか深い考えを持たずに泥縄式に事を運ぼうとした。 例を挙げれば、公園問題を教育委員会マターで運ぼうとしたこと、住民から追及されるに従い「兼用工作物」論など出して来たことなどによく表われていると言えよう。

B 「守る会」は、運動がこれで全て終わったとは考えていないことも報告された。5中跡地に5中と7中を統合した新たな統合校が出来るとして、そのそばに 「教育センター」が予算の関係ですでに工事に着工し、かなり工事が進行している。統合校は7中にグランドを持つことになるのだが、それで果たしてほんとうに こどもたちのためになるのか、それに対してどう対処していくべきなのかと言った点などである。

C 報告を終わるに当たって、「守る会」代表岡野さんからお礼の挨拶があった。

7.質疑応答・会場参加者の方々より発音(要旨 発音順)

・5中7中の統合校に関連して200メートル離れている7中に通うことの是非は検討されたのか。
・駒込病院のPFI方式による民間委託問題に対して支援と協力をお願いしたい。
・(その発言の終了を待たずに)マンション・環境問題についての話合いの時にそういう発言はなじまない。
・「お結びの会」は環境・景観問題だけの会として立ち上げられたのか。
・マンション問題だけになっている感じ。もっと幅広く考えて行った方がよい。
・駒込病院問題も区民生活とって大変重要な問題で取り上げられてよい。
・政治的な方向へもっていこうと考えているのではないか。
・文京区に生じている問題点は数多い。皆でいろいろなことを一緒にやっていく楽しさも備えた会であって欲しい。
・関口では、巨木を中心に樹木、自然林、自然環境を残しながら高層建築を進めてもらう運動が進められている。いろいろ教えて欲しいし、支援・協力をお願いしたい。
・「小・中学校の統合問題」が大事な段階にさしかかっているのに、全く問題とされないのはなぜなのか。
・マンション問題が高さ制限の視点から問題とされているが、防災トイレの設置の義務付けといった点からも要望をしていくべきだ。
・区民が市民運動を進めていくための拠点作りも区に要望していってはどうか。
・メーリング・リストを新たに更新したが、登録を希望される方は山岡宛にご連絡ください。

8.まとめ及び閉会挨拶

大村さんが今回の交流会のポイントを簡単に整理報告、今後、どういう問題が喫緊の、また、多くの人の関心事かをよく話し合いテーマを定めて進めていきたい旨を 述べて閉会した。